Jinshari

ジンシャリ Vol.54

ジンシャリ Vol.54

表紙の1枚 緋梅(A-081)

激しくねじれながら立ちあがる幹から、左右の枝を舞を踊るかのように翻す緋梅の作。根元の荒々しい肌は、半ば朽ちて口を開け、白骨化したシャリをのぞかせており、梅の古木の厳しい姿を見せつける。ただし、春先だけは、深紅の花がひとときの彩りを本樹に装わせる。

展示の裏側

第64回国風賞受賞―黒松 銘「瑞光」

令和8年(2026)、日本盆栽界の最高峰の盆栽展「国風盆栽展」は記念すべき第100回展を迎えます。昭和9年(1934)に始まり、戦時中の中断を経て、現在では毎年2月に東京都美術館で開催される同展には、盆栽界を代表する名品が一堂に会することでしょう。
大宮盆栽美術館が所蔵する盆栽の中にも、国風盆栽展に出展された作品が数多くあります。ここで紹介する黒松 銘「瑞光」(A-010)もその一つです。
「瑞光」は、現存する黒松最古の石付き盆栽といわれており、昭和10年(1935)の『撫松庵愛培盆栽目録』(売立目録)の表紙を飾って以来、名匠たちの手を経て受け継がれてきました。昭和31年(1956)の国風盆栽展へ初出品された翌年、大宮盆栽村の九霞園初代園主・村田久造が、愛知県岡崎市の大樹園・鈴木佐市の仲介によりこの黒松を譲り受け、関西から関東へと移されました。
その後、村田久造の弟子のひとりである神奈川県山北町の松月園・松田恭治のもとで培養され、昭和46年(1971)の第45回国風盆栽展、昭和53年(1971)の日本盆栽作風展などで注目を集めます。平成2年(1990)の第64回国風盆栽展では、石付き盆栽として初の最高賞「国風賞」を受賞。この出展に際し、村田久造により「瑞光」の銘がつけられました。
時代とともに姿は少しずつ変化しましたが、この樹がもつ美しさを保ちながら、今日まで受け継がれてきました。現在、「瑞光」は当館庭園にて展示されておりますので、年月を経て石と一体化した姿をご覧ください。

売立目録 昭和16年(1941)

売立目録 昭和16年(1941)

国風賞受賞時 平成2年(1990)

国風賞受賞時 平成2年(1990)

令和6年(2024)

令和6年(2024)

職人の仕事

黒松 銘「獅子の舞」の緊急植え替え

大型の黒松盆栽 銘「獅子の舞」(A-065)は、公募によってその名を冠した盆栽で、多くの来館者に親しまれています。樹高1mを超える堂々たる姿は、数多くの盆栽が並ぶ当館の庭園でもひときわ目を引く存在です。
しかし2024年春、旺盛に成長する根の圧力により、鉢にひびが入り始めました。破損は日々進行し、応急処置を繰り返しながら替わりの鉢を探すことに。近隣の盆栽園・蔓青園の協力により、植え替えに耐える鉢を分けていただきました。
植え替えは休館日に、美術館の技師2人と大宮盆栽協同組合の職人2人、計4人が力を合わせて作業に当たりました。鉢が破損しており移動には危険が伴うため、庭園の盆栽棚上で作業を行います。まずは、鉢から木を引き上げる工程です。根が鉢に密着しているため、土を限界まで崩して軽くし、スリング(吊りベルト)を根鉢(根と土のかたまり)に通します。スリングに角パイプを差し込み、まるで神輿を担ぐように慎重に持ち上げましたが、木の重さにより、4人がかりでも一度では持ち上がりませんでした。
次に、破損した鉢の破片を取り除き、新しい鉢を差し入れる工程へと移ります。新しい鉢は約30kgと重く、素早く差し込むには全員の連携が必要です。高所での作業は危険を伴うため、台車の上に立ち、2人が力を合わせて持ち上げ、他の人が台車を支えながら慎重に作業を進めました。
植え込みには、赤玉土の硬質と桐生砂を混ぜた用土を使用。水はけと通気性を保ちつつ、水持ちも良い配合にしました。
最後に、木の植え付けの場所を確認。通常は針金で固定しますが、今回は木が重く安定していることから、針金固定は行いませんでした。5袋分の用土を使い、たっぷりと水を与えて作業は完了。職人たちの技と工夫、見事な連携により、「獅子の舞」は新しい鉢の中で再び力強く成長しています。ご来館の際は、庭園でぜひその堂々たる姿をご覧ください。

新しい鉢を差し入れる

新しい鉢を差し入れる

隙間なく土を入れる

隙間なく土を入れる

たっぷり水を挙げて完成!!

たっぷり水を挙げて完成!!

サポーター通信

「日暮し(五葉松)」特別展示 ウェルカム・ミュージアムの活動

大宮盆栽美術館では、ボランティアによる「ミュージアム・サポーター」を結成し、当館事業を共に担っていただいています。今回のサポーター通信では、11月1日から3日にかけて実施したウェルカム・ミュージアム活動について、報告します。

私たちサポーターは、毎週土、日、月曜に「ウェルカム・ミュージアム!」として、一般来館者を対象とした展示ガイド(随時)を実施しております。本年の11月1日から3日までは、盆栽界の至宝「日暮し(五葉松)」の特別展示期間(10月30日から11月5日)と重なりました。
「日暮し」という銘は、一日見ていても見飽きないという意味を込めて命銘されました。大小二つの幹の間に抱え込まれるようにして生まれた空間が絶妙な余白の美しさを生み出し、双幹樹の最高傑作として知られています。これまで一年に一度、期間限定で特別公開されてきました。今年も多くの来館者をお迎えし、「日暮しが見られてよかった!」と、数々の賞賛の声をいただきました。日暮しくんもうれしかったと思います。サポーターの私も日暮しくんの魅力を改めて感じ、来館者の皆様と共有できて幸せな時間でした。
今回のガイドを終えて、来館者の方から「また、別の季節にも来たい。」「盆栽園にも行ってみたくなった。」などというお言葉をいただけたことは、これからの活動のエネルギーになりました。ありがとうございます。
「盆栽が好き!」という人が増えてほしいと、いつも願っています。100周年を迎えた盆栽村がますます多くの皆様に楽しい時間を過ごしていただける場になるよう、これからもサポーターとして、微力ですが活動を続けていきたいです。

(ミュージアム・サポーター 田中 紀美江)

「日暮し」の魅力に感嘆!

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