Jinshari

ジンシャリ Vol.55

ジンシャリ Vol.55

表紙の1枚 いわしで(A-120)

本州の一部と朝鮮半島に自生する落葉樹。大地をしっかりと掴み、力強く隆起した根張りと、根元から上に向かって伸び広がる、幹の立ち上がりの美しさが見どころ。中品ながらも、老大樹の相を醸し出す一点である。

展示の裏側 

祝!「米国立盆栽・盆景園」開設50周年!!

令和8年(2026)3月から5月までの通常展「盆栽クロニクル―年代記―」(会場:企画展示室)のなかで、アメリカ・ワシントンDCにある国立の盆栽展示施設「米国立盆栽・盆景園」の設立経緯を紹介するパネルを展示します。
というのも、本年は1976年7月の同園開設から50周年を迎える記念イヤーとなり、米国唯一の国立盆栽展示施設がどのように成立したのか―盆栽の国際化という文化史的観点においても重要な出来事だと言えるからです。
また、当館は2019年8月、米国とさいたま市の盆栽交流の促進や盆栽文化の価値向上を目的に、同園と協力関係の締結を交わした姉妹館でもあり、情報交流を続けている盆栽・盆景園の学芸員やスタッフの方々へのお祝いの気持ちとしてもパネル展示を企画しました。
さて、同園はホワイトハウスから北東に約6km、米国農務省が管轄する米国立樹木園に入ってすぐの場所にあります。詳しい設立経緯は展示室に譲りますが、開設の前年となる1975年、日本盆栽協会から米国政府へ53点の盆栽と6点の水石が寄贈されたことを受け、その公開展示施設として開設されました。
2019年の当館との姉妹館締結式は、日本から贈られた盆栽の展示会場となる「日本パビリオン」内で行われ、清水勇人さいたま市長とリチャード・オルセン米国立樹木園長がサインを交わしました。
今回の展示で使用するパネルは、1975年の盆栽寄贈に奔走した後の樹木園長ジョン・クリーチ氏の著書をもとに同園のキャサリン・エマーソン・デル研究員が2017年に製作したものです。姉妹館提携の協力の一環として、2019年にデータの提供を受けて和訳・製作しました。クリーチ氏が国立盆栽展示施設の設立を目指した背景には、1958年に米国へ単身渡米し、世界に盆栽を広めることになる一人の日本人盆栽家の姿があります。その事績については、2019年の姉妹館締結記念特別展図録『海を越えた盆栽家 吉村酉二―ニューヨーク、1958』にまとめていますので、ぜひご覧ください。

 米国立盆栽・盆景園

米国立盆栽・盆景園

姉妹館提携締結式(2019年8月5日)

姉妹館提携締結式(2019年8月5日)

職人の仕事

黒松―小さな葉が物語る盆栽ならではの技術

荒々しい幹肌や、濃緑で引き締まった針葉が魅力の黒松。幹や枝、葉をじっくり観察してみてください。黒松は自然のままでは葉が長く伸び、幹や枝ぶりの力強さが隠れてしまいます。盆栽の葉が短く整っているのは、特別な品種だからではなく、実は職人の技術によるものなのです。
その技術が「短葉法」です。端的に言えば、小さな盆栽に合わせ、葉を短く成長させるための盆栽独自の手入れ方法です。物理的に葉を切るのではなく、自然界の仕組みを応用し、成長そのものを調整する点が特徴です。特に黒松に効果的で、赤松にも応用できます。葉が短くなることで全体の姿が引き締まり、盆栽としての魅力がいっそう高まります。
作業は、6〜7月に新芽を根元から切る「芽切り」、7〜8月に不要な芽を取り除く「芽かき」、9〜10月には前年の葉を間引く「葉すかし」へと続きます。この一連の作業の中でも、芽切りは特に重要です。勢いの弱い「二番芽」を吹かせ、成長期を短くすることで、葉を自然に短く育てることができます。作業の時期や方法は、地域の気候や木の状態、日当たりなどによって繊細な調整が必要です。葉や枝の数や状態を一つ一つ確認しながら進めるため、根気と労力を要します。わずかな判断の違いが仕上がりを左右し、ときには失敗することもある、まさに職人の経験と観察力がものを言う技術です。
この技法の生みの親は、愛知県岡崎市の盆栽園「大樹園」の初代園主・鈴木佐市です。虫に新芽を食われた黒松から短い脇芽が出たことに着目し、研究を重ねて短葉法を完成させました。
これよりも前は、肥料や水を極端に控えることで葉の成長を抑えていましたが、短葉法の登場により、木の健康を保ちながら短く充実した葉を育てることが可能となりました。育成管理の幅が広がり、良い木をより早く、確実に仕立てられるようになったことで、盆栽としての樹格も格段に向上しました。
盆栽庭園で黒松を観察すれば、手入れの有無による違いが見えてくるはずです。葉の長さひとつをとっても、職人の工夫と技が静かに息づいています。

芽切り後

芽切り後

芽切りを施した黒松(A-069)

芽切りを施した黒松(A-069)

サポーター通信

地域へ広がる盆栽の輪 ~公民館でこけ玉盆栽ワークショップ~

大宮盆栽美術館では、ボランティアによる「ミュージアム・サポーター」を結成し、当館事業を共に担っていただいています。今回のサポーター通信では、公民館で開催したこけ玉盆栽を作るワークショップ活動についてご報告します。
大宮盆栽美術館では、館内だけでなく地域の方々のもとへ出向く「出張盆栽講座」も行っています。今回は、令和7年(2025)11月に南浦和公民館で開催された「こけ玉ワークショップ」の様子をご報告します。
当日は約20名が参加されました。まずは学芸員によるレクチャーからスタート。盆栽村の歴史や盆栽鑑賞のポイントについての解説に、皆さま興味深く耳を傾けていらっしゃいました。続いて、いよいよこけ玉作りのスタートです。今回の素材は、愛らしい赤い実をつけた「ヤブコウジ」。土に触れ、こけを巻く作業では、皆さま真剣そのもの。少し難しい工程などで私たちサポーターがお手伝いすると、安心した表情を見せてくださるのがとても印象的でした。
完成したこけ玉を飾り用の陶板(器)にのせた時の皆さまの嬉しそうな表情。「ありがとう」という温かいお言葉をいただく瞬間は、サポーターとして何よりの喜びです。私自身、昨年4月からサポーター活動を始めたばかりですが、皆さまと一緒に「盆栽の楽しさ」を共有できるこの時間に、大きなやりがいを感じています。
ご自身の手で作り上げたこけ玉は、我が子のように愛おしいものです。ぜひご自宅でも大切に育てていただければ幸いです。皆さまも、作る・育てる・飾る喜びを、私たちと一緒に体験してみませんか?

(ミュージアム・サポーター 末田 和正)

子ども向けにも開催! (大久保東公民館にて。素材は御殿場桜)

子ども向けにも開催! (大久保東公民館にて。素材は御殿場桜)

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