Jinshari

ジンシャリ Vol.57

ジンシャリ Vol.57

表紙の1枚 水石と写真による席飾り

水石:加茂川石(C-012)、写真:大和田良「水溜り石」2023年(2023年特別展「Life with Bonsai」より)

展示の裏側

大和田良さんの水石撮影―企画展「水石/類推の山」制作話

 10月24日(土)から11月29日(日)まで、企画展示室を主な会場として、写真家・大和田良さんによる水石を被写体とした写真作品展「水石/類推の山―大和田良写真展」を開催します。
 大和田さんと当館とは、開館した2010年からのお付き合いです。大和田さんが盆栽をテーマとした写真作品の制作のため当館所蔵盆栽を撮影され、その作品群は翌2011年に当館初の試みとなる写真作品展「FORM-Scenery Seen Through Bonsai」として初公開することになりました。当時30代前半の大和田さんが写真家としてどのように盆栽を「見る」のか――同じ歳の筆者(学芸員)は興味津々だったのですが、15年を経て水石を被写体とされた大和田さんの眼は…こちらはぜひ企画展示室でお確かめください。
 さて、水石を新たな制作のテーマとした大和田さんから、当館所蔵水石の撮影依頼があったのは、2021年12月のことでした。以来、22年8月、23年6月、25年8月と4回に渡り、最終的に69点に及ぶ水石を撮影されました。
 撮影の現場は、とても静かなものでした。学芸員が撮影台に水石を据えた後、大和田さんは構図を決め、淡々とシャッターを切り、「終わりです、次をお願いします。」となります。一点当たりの撮影時間は数分といったところでしょう。15年前の「FORM」の撮影時も、屋外の盆栽を被写体に淡々とシャッターを切っていた大和田さんを思い出します。そして、今回もそうなのですが、あの時の撮影が作品として現れた時、その新鮮さに驚かされるのです。
 本レターの表紙は、2023年の特別展「Life with Bonsai」において、アーティストやデザイナーを招聘し、各氏の作品と盆栽との展示を試みた際、行の間を担当いただいた大和田さんによる席飾りで、今回の企画展に向けた初期作品を出品されました。写真作品の大胆にトリミングした水溜り石から、湖沼の景色がにじみ出るように広がり、座敷に自然景の舞台を創る――“類推の景色”が広がる写真による新たな席飾りの提示でした。ファインダーを覗く大和田さんの眼は、この時、石から広がる景色を確かに見出していたようです。

2011年企画展「FORM」チラシ

2011年企画展「FORM」チラシ

2023年特別展「Life with Bonsai」チラシ

2023年特別展「Life with Bonsai」チラシ

職人のしごと

幹洗い―樹皮の汚れを落とし、盆栽の美しさを保つ

 盆栽は基本的に屋外で管理されているため、雨や埃、雨水の跳ね返りなどによって、幹や枝が汚れていきます。また、鉢土の苔が幹を登ったり、樹皮やその隙間に害虫の卵や雑菌が付着したりすることもあります。こうしたコケやカビなどの汚れを洗い流し、取り除く作業を「幹洗い」といいます。
 不要な苔や汚れを取り除くことで、盆栽の見どころの一つである根張りがはっきりと現れ、病害虫の予防になるだけでなく、盆栽の美しさを高めることにもつながります。
 基本的な幹洗いでは、ピンセットやブラシなどを使い、苔や汚れを丁寧に取り除きます。ブラシを使う際は、樹皮を傷つけないよう、柔らかいものを選んで優しくこすることが大切です。硬いブラシで強くこすると、樹皮が削れて傷になってしまうことがあります。
 樹皮の下には、木が成長するうえで重要な形成層があります。幹洗いによって形成層を傷つけると、水分や養分の通りが悪くなり、時期によっては乾燥や凍結によって、その先の枝が枯れ込む可能性があります。そのため、汚れを落としながらも木を傷めない、慎重な作業が求められます。
 また、小型高圧洗浄機や高圧の噴霧器を使い、水圧によって細かな汚れを落とす方法もあります。雑木類などの落葉樹は、葉を落とした冬に作業を行うと、幹や枝の全体像が見えやすい一方で、枝先まで洗う場合には、春に向けて準備している芽を水圧で飛ばさないよう注意しなければなりません。
常緑樹や樹皮の荒れた古木でも、強すぎる水圧だと古木特有の荒々しくはぜた幹肌が剝がれたり、葉が傷んだりすることがあるため、樹種や木の状態に応じて水圧を細かく調整します。
 幹洗いは、木を傷めないよう細心の注意を払い、適切に行うことで、病害虫を予防するとともに、盆栽の鑑賞価値を高めることにもつながるのです。

ブラシで優しく苔や汚れを取り除く

ブラシで優しく苔や汚れを取り除く

高圧洗浄機で汚れを落とす

高圧洗浄機で汚れを落とす

サポーター通信

―夏休みワークショップ― 小さな一鉢から広がる盆栽の輪

 大宮盆栽美術館では、ボランティアによる「ミュージアム・サポーター」を結成し、当館事業を共に担っていただいています。今回のサポーター通信では、ミュージアム・サポーターの活動内容について紹介します。

 大宮盆栽美術館では、毎年夏休みに子どもたちを対象としたワークショップを開催しています。今年は、秋に赤い実をつける紅したんを素材に、苔玉づくりが行われました。
 参加した子どもたちにとって、ケト土を手に取ること、紅したんという植物に向き合うこと、苔を貼り付けること、完成した苔玉を水に浸すことは、いずれも新鮮な体験であったことと思います。小さな手で土を包み、形を整える作業は決して容易ではありません。それでも、子どもたちは真剣な表情で取り組み、自分だけの一鉢を丁寧に仕上げていました。
 盆栽園の先生のご指導のもと、私たちサポーターも、子どもたちの初めての盆栽体験が楽しく実りあるものとなるよう、作業の手順や力の入れ方を分かりやすく伝えながらお手伝いしました。保護者の皆さまにも温かく見守っていただき、会場には穏やかで和やかな時間が流れていました。
 盆栽は海外でも高く評価されていますが、日本でさらに親しまれていくためには、こうした幼い頃の体験が大切だと感じます。今回の思い出が、将来、盆栽への関心につながることを願いながら、今後もサポーターとして活動を続けてまいります。
(ミュージアム・サポーター 佐藤悦子)

夏休みワークショップの様子

夏休みワークショップの様子

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