Jinshari

ジンシャリ Vol.48

ジンシャリ Vol.48

【表紙の1枚】 寒椿(A-125) 行の間の床飾り

寒椿はつやのある葉を年中繁らせ、11月から3月頃には赤紫色の大輪の花を咲かせる。
多くの樹木が眠る寒樹の季節に、あでやかな彩りを与えてくれる存在である。
本席では、上品な佇まいの模様木の寒椿を、臨済宗の古刹・大徳寺 塔頭の僧侶による禅語の一行書「今日無事」と合わせ、花木の姿を一層引き立てる床飾りとした。
推定樹齢50年
https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/collection/a-125/

展示の裏側

特別展 煎茶と盆栽~「盆栽」の夜明け

私たちが普段飲んでいる緑茶(煎茶)は、江戸時代前期に渡来僧・隠元によって、中国から日本にもたらされました。江戸時代中期には、形式化した茶の湯(抹茶)に対して、自由な気風に満ちた煎茶が日本の禅僧やインテリ層の間で歓迎され、中国文化に憧れを持つ文人たちの間に広まりました。

 令和6年2月に開催する特別展では、煎茶文化の影響を受け、盆栽に起きた大きな変化とその過程に迫っていきます。ここでは特別展に先立ち、その変化の一つとして、「座敷飾りの誕生」を少しだけ紹介します。

 表紙の写真に見られる、「床の間に盆栽」という飾りは、一昔前の時代劇にも登場し、盆栽の伝統的な飾り方と思われがちです。しかし、靴を脱ぐ日本の文化では、土は不浄の物とされ、盆栽を座敷で鑑賞することはありませんでした。では、「床の間に盆栽」はいつからはじまったのか、その答えが江戸時代末期から明治期の文人たちが盛んに催した煎茶会にあります。

 図1は、初期の煎茶会の一席を記録した図です。床の間に盆栽が飾られる様子は、現代の私たちの目には珍しくないものにも見えます。しかし、長い歴史の中で、座敷の、しかも最も格の高い床の間に盆栽が飾られることは、それまでにはありえないことでした。文人たちの煎茶会は、盆栽に新たな居場所を与えたのです。

 もっとも、同じ頃の明治9年(1876)に開催された大変有名な煎茶会(図2)では、屋外や縁側、または座敷に盆栽を飾る事例があり、床の間だけが飾りの場所ではなかったようです。特別展では、このような盆栽に起きた変化と過程を探り、現在の「盆栽」が生まれた背景に迫りますので、ぜひご覧ください。

会期:令和6年2月10日(土)~3月20日(水祝)

図1「雲烟供養図録」(うんえんくようずろく)明治13年(1880)

図1「雲烟供養図録」(うんえんくようずろく)明治13年(1880)

図2「青湾茗醼図誌」(せいわんめいえんずし)明治9年(1876)

図2「青湾茗醼図誌」(せいわんめいえんずし)明治9年(1876)

特別展 煎茶と盆栽~「盆栽」の夜明け

職人のしごと

毛布巻き―盆栽と盆器を守る

木々が活動を止め、休眠期に入る冬。しかし、職人の仕事に休みはありません。本号では、厳しい寒さから盆栽と盆器(鉢)を守る「毛布巻き」等の対策についてご紹介します。

 関東地方においては、寒さに弱い南方原産の盆栽以外は戸外で管理をします。高地や寒冷地が原産の五葉松や蝦夷松などの樹木自体は寒さに強く丈夫ですが、水分を含んだ土が凍結して膨張し、盆器が割れてしまうことがあります。盆栽業界ではこれを「凍て割れ」と呼んでいます。

 当館では歴史ある貴重な盆器を用いている盆栽が多いため、一鉢一鉢の状態を見極めながら対策を行っています。特に植え替えをしてから年数が経ち、根が張り巡らされた盆栽は鉢内の圧力が高まって「凍て割れ」を起こしやすいため、一層の注意が必要です。

 美術館では、霜が降りる3℃を基準に「毛布巻き」と呼ばれる作業を行います。閉館後に鉢に毛布を巻き付け、翌朝の開館前に外す作業を毎日繰り返し、春になるまで続けます。毛布を巻く際には、枝やジン・シャリを折らないように注意し、毛布が強風で飛ばされないように紐やゴムバンドで縛るなどして万全を期しています。

 また、特別に寒い日は樹木自体が痛んでしまうため、屋外に展示している盆栽を軒下や培養所に移動するなどの防寒対策を並行して行います。さらに、午後の水やりを控えて凍結予防を行ったり、日光に当てて温めたりと、盆栽ファーストの気遣いは尽きません。人間さながら毛布にくるまれた盆栽は、開館中には見ることができない姿です。大切に扱われた盆栽の様子を、写真でご覧ください。

蝦夷松 「轟 (とどろき)」  A-005 の毛布巻き

蝦夷松 「轟 (とどろき)」 A-005 の毛布巻き

【関連ページ】蝦夷松 銘「轟」A-005

サポーター通信

「観て、聴けて良かった、また来たい、誰かに話したくなる」―ガイド事業

【大宮盆栽美術館では、ボランティアによる「ミュージアム・サポーター」を結成し、当館事業を共に担っていただいています。今回のサポーター通信では、サポーターの5つの活動のうち、ガイド事業についてご紹介いただきます。】
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 私たちサポーターは、国内外からの個人及び団体来館者への盆栽ガイドを行っています。

 現在は、感染症対策の緩和を受け、月曜日の定例ガイド「ウェルカム・マンデー」をはじめ、「団体ガイド」の受付開始と徐々に活動範囲を広げつつあります。

 ガイドでは、盆栽の見方や見どころ、樹種・樹形、管理の仕方、盆栽村の歴史などを解説したり、展示中の盆栽の鑑賞サポートを行っています。ガイドの際には、来館者が自由に盆栽を鑑賞できる時間を持てるように心がけています。

 来館者の「盆栽の楽しみ方が段違いに分かりやすい。また、来たい。」の声が励みになります。また、来館者と共に鑑賞することで、わたしたちも新たな気付きに出会えます。

 盆栽は、春の梅や桜の花、もみじの芽吹き、夏の松柏盆栽の緑、秋の紅葉、冬のけやきの細かい枝先に輝く水滴など、四季折々の楽しみがあります。春夏秋冬の年4回、サポーターと楽しく鑑賞して「盆友」になりませんか。
(サポーター 江里口幸弘)

団体ガイド 10月13日に24名の団体様。2グループに分けてガイドをしました。

団体ガイド 10月13日に24名の団体様。2グループに分けてガイドをしました。

ウェルカム・マンデー 盆栽は海外でも大人気! 外国人のお客様も増えてきました。

ウェルカム・マンデー 盆栽は海外でも大人気! 外国人のお客様も増えてきました。

【関連ページ】大宮盆栽美術館ホームページ「展示解説  展示品の解説に係る様々なメニューをご用意しています。」

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