Jinshari

ジンシャリ Vol.53

ジンシャリ Vol.53

表紙の1枚 観光パンフレット「大宮」

昭和初期に埼玉県大宮保勝会が発行した「大宮」の観光パンフレット。裏面には、鳥瞰図画家・吉田初三郎による「大宮鳥瞰図」が掲載され、大宮の景観とともに上の図版のとおり盆栽村の碁盤の目状の町内や街路樹の桜、盆栽棚などが詳細に描かれている。図には、「帝都郊外唯一の理想郷」と記されており、大宮を理想的な観光地として称揚している。表面には「大宮町勢概観」が写真入りで掲載され、氷川神社と大宮公園を中心とした観光スポットを紹介している。

大宮盆栽村100周年記念特別展 「緑のフロンティア ― 大宮盆栽村100年 ― 」 令和7年10月3日(金)~12月10日(水)

乞うご期待! 初公開の出品資料

今から100年前の大正14年(1925)4月、東京から来た盆栽園が武蔵野に広がる松林を開拓し、大宮盆栽村は誕生しました。大宮盆栽美術館では、大宮盆栽村100周年を記念し、盆栽村の魅力に迫る特別展を開催します。
今回の特別展に向けて、関係資料の調査と収集を進めてきました。ここでは、今回の特別展で初公開となる新たな収集資料のなかから、「清大園」の看板をご紹介します。 清大園の園主・清水利太郎(1874~1955)は、盆栽村の開拓を先導し、盆栽村の最初の住人となった人物です。盆栽村に来る前は、駒込千駄木の団子坂薮下(現東京都文京区)に園を構えており、明治10年代に菊人形の興行から盆栽専業に移行し、業界をリードしていました。今回、ご子孫のご厚意により、千駄木の清大園で掲げられていた看板を当館に寄贈いただきました。看板は2枚あり、1枚は利太郎の父親である藤吉と交流のあった山岡鉄舟(1836~1888)が明治19年(1886)6月にきごう揮毫したもので、片面に「清大園」、もう片面に「種樹花盆栽」と刻まれています。山岡鉄舟は能書家として知られており、看板に踊る文字も迫力に満ちています。
看板は埼玉県秩父市の倉庫に保管されていました。2枚とも2mを優に超える大きさに加え、厚みは3㎝ほどもある一枚板で、かなりの重量があります。このため、運搬には大変苦労しました。搬入後、時間をかけて経年の汚れを落とし、殺虫・殺菌のための燻蒸処理を施し、ようやく展示ができる状態になりました。
この看板が園内のどこに掲げられていたのかは不明ですが、これほど堂々たる看板のあった千駄木時代の清大園は、相当大きな建物を構えていたことでしょう。盆栽村の開拓者となった清大園の規模や威厳をうかがえる看板です。ぜひ、展覧会の会場で実物をご覧ください。

清大園看板(種樹花盆栽)

清大園看板(種樹花盆栽)

盆栽村ゆかりの盆栽

特別展では、歴史展示と合わせ、ロビーとギャラリーを会場に、大宮盆栽村の各盆栽園(大宮盆栽協同組合加盟園)が所蔵する名品盆栽を展示し、各園の特徴と魅力を紹介します。週替わりの各園展示となり、前半3週間は生命力あふれる松柏盆栽を得意とする園、その後に美しいこうよう紅葉も楽しみな雑木盆栽を得意とする園を取り上げる予定です。
また、当館が所蔵している盆栽のなかにも、盆栽村の歴史と深く関わる木があり、盆栽村100周年の今年は注目を集めています。ここでは、その代表格である、蝦夷松「とどろき轟」を紹介します。
「轟」は、昭和初期に国後島のふるかまっぷ古釜布で自生していたものを鉢上げし、盆栽村の蔓青園二代目園主・加藤留吉が盆栽に仕立てたものです。推定樹齢は1,000年を超え、当館でも最古老の盆栽です。昭和7年(1932)1月刊行の盆栽専門誌『盆栽』12巻1号に、「蝦夷松 双幹」として「轟」が掲載されています。現在は、右側の幹が抜け、白いシャリとなって一層の古格を醸し出していますが、当時は右側に大きく張り出した野趣あふれる姿をしていました。
深みのある緑の葉に荒々しい幹肌が特徴の蝦夷松は、昭和初期に大ブームとなり、その生産拠点として名を知らしめたのが大宮盆栽村でした。『盆栽』には、盆栽村の陳列会では蝦夷松が大半を占め、「蝦夷松の村」だと記されています。特に蔓青園の留吉・三郎父子は、国後島まで足を運び、広大な湿原で採取された蝦夷松を入手し、数多くの蝦夷松盆栽を世に広めたことから、「蝦夷松の父」と呼ばれました。
自生地の原木が枯渇したこともあり、第二次世界大戦前にそのブームは収束しますが、盆栽村の人々が苦心して培養を成功させた蝦夷松が、こうして現在でも元気に命をつないでいることにロマンを感じます。盆栽村の生き証人といえる蝦夷松「轟」にも、会いに来てください。(企画展示室に蝦夷松関係の資料も展示します)

蝦夷松「轟」 昭和6年(1931)の姿

蝦夷松「轟」 昭和6年(1931)の姿

蝦夷松「轟」 (A-005)現在の姿

蝦夷松「轟」 (A-005)現在の姿

サポーター通信

大宮盆栽村かるた 大宮盆栽村100周年記念グッズ

 大宮盆栽美術館では、ボランティアによる「ミュージアム・サポーター」を結成し、当館の事業を共に担っていただいています。今回のサポーター通信では、昨年11月5日から本年3月20日までの休館中の活動についてご報告します。

記念すべき大宮盆栽村100周年に合わせ、大宮盆栽美術館では「ミュージアム・サポーター」の皆さんと一緒に、楽しく学べる「大宮盆栽村かるた」を製作しました。
令和6年(2024)11月から翌年3月までの約5か月間、庭園のリニューアルに伴い美術館は休館していました。この期間を活用して、サポーターの皆さんと「100周年に向けた記念コンテンツを作ろう!」と話し合い、教育普及にも役立つ「かるた」の製作がスタートしました。
かるたは「あ」から「ん」までの46枚セット。盆栽村や盆栽にまつわる46字分のキーワードを挙げ、サポーターの皆さんがそれぞれの札を担当。読み札の句をつくり、絵札のイメージも考えていただきました。
イラストは、ほんわかとした可愛らしい雰囲気に仕上げつつ、盆栽の幹や枝、葉の形など、樹種ごとの特徴をしっかりと表現しています。
さらに、札の裏面には、キーワードの解説を付け、遊びながら、大宮盆栽村や盆栽について楽しく学べる内容になっています。
お子さまから大人まで、幅広い世代に楽しんでいただける「大宮盆栽村かるた」は、10月3日から 大宮盆栽美術館ミュージアムショップにて販売します。
ぜひ手に取って、盆栽の魅力に触れていただき、楽しんで学び、多くの方に盆栽村の魅力を伝えてください。

大宮盆栽村かるた

大宮盆栽村かるた

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